①水槽立ち上げから、魚を入れるまで
飼育を始めた理由
高校生の頃、海で釣ってきた魚を飼育することにハマりました。
それまでにも、川魚や淡水の熱帯魚など様々な魚を飼ったことがありましたが、近海に住むリアルな魚の魅力にとりつかれたのです。水槽を眺め、普段釣る魚がエサを食べたり泳ぐ様を見ることができて、驚きと感動の幸せな日々でした。
しかしそれは長くは続きませんでした。ある時からバタバタと死んでいき、ついには全滅してしまったのです。原因は、『夏場の水温上昇』です。水槽の海水温度が30℃を越えたあたりから食欲がなくなり、病気になったりして死んでしまったのでした。冬場の低水温はヒーターを付ければ対応できましたが、高水温はどうしようもなく、飼育を断念。
近海の海水魚の飼育の難しさを痛感しました。
先日、店舗の応接室を掃除している時でした。この殺風景な部屋の雰囲気を良くするにはどうしたらいいか?あれこれ考えているうちに、ふとこの記憶を思い出しました。自社店舗を全館空調で年中快適な温度環境にしているので、ここならあの魚たちが飼えるかも、と。あの時の飼育を再びやってみたい。魚たちがいる水槽があれば、この応接室の雰囲気も和むしちょうどいいかもしれないと思いました。
これが、趣味の釣りで釣ってきた魚を飼うことにした理由です。
早速水槽をセッティング
まだ飼育する魚もいないのに、我慢しきれずセッティングを開始してしまいました。
人口海水を入れる
しばらく水槽内は空の状態にしていましたが、そろそろ魚を入れる準備を…と、とりあえず海水をいれました。
いざ、釣り場へ
飼育する魚を釣り上げるべく、某漁港に行きました。狙うはできるだけ小さな魚。理想はキーホルダーぐらいのサイズです。ちなみにエサはゴカイ。岸壁の際に糸を垂らします。
いきなりアタリが!
最近少し暖かくなってきたとはいえ、海水温はまだまだ低いためボウズ覚悟でしたが、セットした瞬間にアタリがありました!
釣れたのはアイナメでした。(画像は無いですが)少しサイズが大きかったので逃がしてやりました。まぁこんなにすぐ釣れたんだし、どんどん飼育候補の魚が 釣れるだろうと。甘かったです…。それからサッパリ音沙汰なく、時間が過ぎていきました。
店舗に持ち帰る
海から店舗までの車道中で死んでしまわないかドキドキです。
しかし特にトラブルもなく無事に持ち帰ることができました。第一関門突破です。
水槽の中へ
魚たちを水槽へ投入します。温度変化にびっくりしないよう、時間をかけて行います。(水が濁っているのは、砂利を追加したから)
環境に慣れず、ビビる
1時間ほど経過後、袋から解放しました。それからしばらく環境の変化に萎縮するように、3匹とも水槽の隅っこの方でじっとする生活が続きました。
隠れ家を入れる
水槽に入れてから3日が経ちました。魚たちの隠れ家に、コンクリートテトラのミニチュアを入れました。待ってましたとばかりに、早速ベッドのように寝そべっています。
②環境に慣れるまで
第二関門
ガシラを水槽に入れてから5日が経過。古木を追加して隠れ家を増やしました。そこから動かずにじっと隠れた生活が続きましたが、ようやく少しずつ動くようになってきました。気がかりは、まだ全くエサを食べてくれていないことです。
エサを食べることが、次のハードルとも言えるでしょう。お腹はぺったんこになっているので、かなり空腹のはずですが、エサをやってもチラ見するだけで食べません。
初めてエサを食べる
6日目の朝、ついにエサを食べてくれました!
初めに食べてくれたのは、一番体が小さいやつでした。このまま食べずに弱って死ぬのではないかと心配だったので、とりあえずほっとしました。
底の汚れの問題
それから、徐々に他の2匹もエサを食べるようになり、少しずつ動きも活発になってきました。ちなみにエサは、スーパーで売られている”ちりめんじゃこ”です。
そこで一つ問題があることに気づきました。ガシラはエサを食べるのが下手で、よく底に残してしまいます。一度底についたエサには、なかなか気づいてくれず、そのまま腐ってしまうという問題です。
水槽の掃除屋さん
ペットショップに行くと、海水魚コーナーにエビが売られていました。『キャメルシュリンプ』というそうです。観察していると、底に落ちてあるエサを一生懸命食べています。これだ!と思い、3匹買いました。ガシラたちに食べられないか心配でしたが、エビの大きさがそこそこあったのと、釣ってきた漁港では鉢合わせすることがない相手ということもあり、大丈夫とふんでいました。
しかし、朝になってみると3匹ともいない…。どこへ行ったか水槽中を探しましたが、どこにもいません。まさかと思ってガシラの腹を見ると、パンパンに膨れ上がっていました。そしてそばにはエビの殻が転がっていたのです。
深く反省
食べられてしまったエビたちには、本当に申し訳ない思いです。よくよく考えてみれば、口の大きいガシラなら、あれくらいの大きさのエビなんてぺろりです。釣りをする人からすれば当たり前のことでしょう。私も釣りをする身でありながら、冷静な判断力を見失っていました。
昼間、水槽にいれた時はチラ見するだけで追いかけることもなく、うまく共存していたように見えましたが、夜の間に狙われたようです。
よく食べる3匹
よほどエビが美味であったらしく、しばらくはちりめんじゃこを食べなくなってしまった3匹ですが、今では以前のようによく食べるようになりました。釣ったときより、早くも体が少し大きくなった気がします。
新しい掃除屋さん
底掃除をしてくれる生き物については、あの事件以降いろいろ調べてみました。結果、貝もよく働いてくれるということを知りました。なんと今では生きた貝をインターネットでも注文ができる時代なんですね。早速5匹注文しました。『アツムシロガイ』です。
彼らは期待以上に活躍してくれています。
『ガシラ』ではない奴⁉
飼育している3匹のガシラのうち、どうやら1匹はガシラではないことが判明しました。実は前からこの1匹だけ体の模様が違うなぁと思っていたのですが、いろいろ調べてみると、正体は『ヨロイメバル』でした。そう、ガシラではなく『メバル』だったのです。ガシラに比べると食材としては少し劣るようです(もちろん食べはしませんが)。体の形はほぼ同じですが、地味ながらも色合いはガシラよりきれいなので気に入っています。
コケの掃除人
水槽を立ち上げてからある程度日数が経過したこともあり、全体的にややコケが生えてきました。コケ掃除の得意な生き物について調べてみると、『ヤエヤマギンポ』という魚がよくコケを食べてくれるそうです。早速ペットショップで購入しました。
底の掃除部隊を追加
底の掃除屋さんを追加しました。ネットで購入した4種類の貝たちです。色合い、形はすこしずつ異なりますが、底の残飯などを処理してくれます。普段は底に潜ってじっとしていることが多いですが、夕方になるとローラー作戦を展開します。
働き者
ヤエヤマギンポ(通称ヤエギン)を投入してからというもの、ミニチュアテトラの付着物がとれてきれいになりました。主に昼間、せっせと食べてくれているようです。顔と動きにとても愛嬌があります。
③ガシラに家を与えるまで
エサを食わなくなる
水槽の環境がようやく軌道に乗り始めたようなので、水槽内の障害物レイアウトを変えてみました。手を突っ込んでの作業なので、魚たちはついに食われる時が来たか!とばかりに必死で逃げまどいます。もちろん魚には触れないように気を付けてやりましたが…。
しかし困ったことに、それ依頼ガシラたちはエサを食べなくなりました。
絶食状態は、3日間続きました。相当恐ろしかったようで、エサを入れてもノーリアクションです。
生きエビで復活
エサを食わなくなってから4日目。まずい、このままでは餓死するかも…という不安から、彼らにとっては上級グルメであろう、生きたエビを与えることを決意しました。
今までのちりめんじゃこよりもきっと食欲がそそられ、精神的ダメージも吹っ飛ぶに違いない、と思い釣りえさ屋で購入。
早速投入してみると…やはり!食べる気になったようです。慣れないようで、逃げられてますが(笑)
変な貝
水槽のコケ掃除部隊として、『マガキ貝』を追加しました。他の貝と比べて体は大きいですが、茶色のコケをよく食べてくれるそうです。普段はじっとしていることが多いのですが、たまに中身がでてくる姿はまるでカタツムリというかエイリアン…。気持ち悪いのであまり人気がないんだとか。
慣れてくる
ここ最近は、とくにトラブルもない毎日です。なんせよく食べます。
エサやりの時に、水槽の角を軽く叩いてから与えているのですが、最近ではその音に反応して寄ってくるようになりました。観察していると、エサの食べ方には3匹それぞれ特徴があることがわかりました。
チビ…一番懐いており、落ちてくるエサを見逃さず上手に食べる 。
大きい方…食べるのがヘタで臆病。どんくさい。
ヨロメ(ヨロイメバル)…人間にあまり近づかない。エサの時も離れた所から食べにくる。
丸呑みされる
朝のエサやりの時、水槽内に違和感を感じました。
??…ヤエヤマギンポがいない!
熱心にコケの掃除をしてくれていた彼の姿がどこにもありません。水槽内を徹底的に探しましたが、かけらすら見当たりませんでした。大きさ的にろ過機に吸い込まれる可能性もゼロなので、あとはガシラに食われたとしか考えようがありません。ショックです…。
数日後、ペットショップに行き、新しいコケ掃除のメンバーを増やしました。
ヤエヤマギンポ(特大サイズ)と インドカエルウオです。
これらは体が少し大きいので、いくらガシラでも丸呑みされることはないでしょう(希望的観測)
1匹、☆彡になる
悲しいことに、ガシラの1匹が☆になりました。水槽のレイアウトを替えて依頼、食欲があまりなかった子です。もともと臆病なので、あの時の恐怖が記憶に焼きついていたのか、段々と食欲が無くなっていき、ついに朝方旅立ちました。残念です。
勢力争い
ガシラとヨロイメバルの間で勢力争いが激化しています。
以前はヨロイメバル(ヨロメ)の方が体が少し大きく、ガシラ(ガッシー)を追いやっていましたが、今は大きさがあまり変わらなくなったのもあってか、立場が逆転してしまいました。以前はあれだけ団子のようにくっついていたのが、今はヨロメが視界に入るなりガッシーが執拗に噛みつく、という事態にまで発展しています。
最近ヨロメの食欲が無くなり、どんどんやせ細っているのが気がかりです。
ガシラに家を与える
ヨロメへの攻撃があまりに激しくなってきたので、ガッシーに家を作ってあげました。赤い屋根のシンプルな犬小屋風です。水槽に入れた当初は大騒ぎでしたが、だんだんと慣れていき、ついに家の中に入るようになりました。プライベート空間ができたことで、攻撃が治まればいいのですが…。
④かわいいマガキ貝
新しい仲間
家を与えてからというもの、ガッシーが家に閉じこもる時間が長くなり、ヨロメへの攻撃が激減しました。ヨロメの食欲も回復し、水槽内は平和な状態です。
そこで、淡路島で釣ってきた新しいメンバーを投入することにしました。
『メバル』と『ベラ』です。
メバルはガッシー達に近い大きさの個体で、まるで兄弟のよう。
ベラは普段わりと中層を泳ぎ回っている印象があり、水槽が華やかになりそうで楽しみです。
ベラが大暴れ
ベラは優雅に泳ぐどころか、底砂をまき散らして大暴れ。あちこちやたらと砂を巻き上げて穴を掘ります。そしてしばらく隠れてはまた他の場所をほじくり返す、といった行動。かなり臆病な子のようです。
困ったことに、底に溜まった汚れが浮遊して水がにごり出しました。周りの魚たちは明らかに拒否反応をしめして遠ざかっています。
病気発生
ベラとメバルを投入してから、水槽内に異変が起きました。病気発生(゚Д゚;)
みんな体をこすりつけ、目が白くなっています。まさに大ピンチです…。調べてみると、どうやら原因は、ベラが砂をまき上げたことで底の雑菌が舞い上がって魚に付着したか、新しい二匹が元々病気を持っていたか、ということらしいです。たちまちガッシーもヨロメも食欲を無くしています。
放流、そして治療
魚たちの容体が急激に悪化。とり急ぎ、ベラとメバルを海に返しました。
淡路島で釣った魚を神戸港に放す…。複雑な思いにひたっているひまもなく、すぐに残った魚たちの治療に。
どうやらハダムシという寄生虫が原因のようです。調べてみると、淡水浴という治療が効果的だということがわかりました。5分ほど淡水に入れるだけ、というシンプルな治療法で、淡水に弱いハダムシが魚体から離れたら元に戻すのだそう。簡単ですが、海水魚にとって淡水に入れられることはかなりのダメージを受けるようで、へたすると死んでしまうらしい。
しかしほっといてもただ弱っていき、自然に治ることはないみたいなので、ビビりながら決行しました。
淡水浴の効果
淡水浴をしてから少し回復したような様子で、ひとまず胸をなでおろしました。正直、ガッシーがぐったりと体を傾けているのを見ている時は、涙目になっていました。
治療後、ガッシーは少し泳ぐようになりました。しかしなぜかいろんな場所で逆立ちになっていることが多く、水面から尻尾を突き出すという奇妙な動きをしています。まぁとりあえず回復する傾向にあるならいいかと…。
安心したのも束の間、また日に日に体が白っぽくなっていき、弱り出しました。エサも全く食べません。しかも今度は唯一元気だったカエルウオのカエルちゃんまで…。水槽内に病気が蔓延しているようで、調べてみると、淡水浴は病気がひどい場合は何回もしないと治らないとのことだったので、もう一度やってみることにしました。
あっという間の悲劇
それから治療の努力もむなしく、2回目の淡水浴の直後にガッシーが☆になりました。続けての淡水浴に、体力がついていかなかったのかもしれません。そしてカエルちゃんも…。短い間でしたが、かわいがっていた魚たちの最期に辛過ぎて言葉もありません。あとはヨロメだけが残りました。相変わらずじっとして動きませんが、治療前よりは少しましになったように見えます。
原因の究明
海水魚に詳しいペットショップの人に、状況を説明し、考えられる原因について教えてもらうことができました。その方いわく、ハダムシの寄生も考えられるが、そもそもは根本的に水質の悪化が原因ではないか。水質が悪いことから魚の抵抗力が落ち、病気にかかりやすくなるということでした。そして魚にとって理想的な水質を維持するには、万全のろ過機能とミネラルを保つためのマメな水換えが必要だとか。そして最後に心に突き刺さったのが、「海水魚の水槽はそう早くには立ち上がらないですよ。安定したサイクルを構築するには早くても半年~1年はかかります」
なるほど…。確かに定期的に水換えはしていたけど、ろ過機能は上部のみ。一般的に上部フィルターは生物ろ過の能力が低いらしい。 その他にもいろいろ飼育のコツを伝授してもらいました。アドバイスを受けて、心に決めました。「一旦水槽をリセットしよう」
そのため、ヨロメを放流することにしました。自然界なら回復も早いという期待を込めて。。病気にして放流…申し訳ない気持ちでいっぱいです。
そして、貝だけが残りました。貝たちは今回の魚の病気とは無縁のようです。飼育日記のタイトルを変えるか迷ってます。「マガキ貝とその仲間たち」