隠蔽配管で設置されたエアコンの取替え

【既設の配管について】
エアコンを取り替える際に、お客様から既設の配管が再利用できるかについてご質問をいただくことがあります。配管が使えないとなると、新たに壁に穴をあけるなどの工事が必要となりますので、コスト削減のためにもできる限り再利用したいものです。結論から言いますと、エアコンの既設配管は一定の条件を満たしていれば再利用可能です。
このことは、大手エアコンメーカーもカタログや技術資料などに明記しており、そこには既設配管を再利用可能かの見極め方と作業の手順が掲載されています。

『ダイキン工業 ルームエアコン』カタログ抜粋

【機器を取替えるにあたって大切なこと】
既設配管を再利用してエアコンを取り替える場合に、注意すべきポイントをあげてみました。
≪ポイント①≫配管の延長
既存エアコンと新しいエアコン本体の寸法が違ったり、新しいエアコン本体に付属している配管の長さが短い場合は、既設の配管を伸ばす必要があります。この時に重要なのが配管の継ぎ目に隙間を作らないよう、確実に連結させることです。
 
≪ポイント②≫裏板のビスを固定
室内機を壁面に固定しますが、固定のビス位置が新旧で異なる場合がほとんどです
。この時に注意しないといけないのは、室内機を引っ掛ける裏板(薄い鉄板形状の部材)を壁の下地があろところにしっかりと打ち込むことです。
下地に効いた状態でないと、機器の重みでずれ落ちてくる危険性があります。
 
≪ポイント③≫ドレン配管の接続
室内機に付属しているドレン配管は、壁内に立ち上がっている配管に差し込むようになっています。室内機からの水が配管を流れていくようにきっちり勾配がとれるように注意し、外れないように深く差し込むか固定します。

ビルトインエアコンの取り替え

【取り替える前に確認しておくべきこと】
例えば天井カセット形のエアコンを取り替える場合、メーカーや製造年によって機器本体やパネルの寸法が異なります。新しいエアコン室内機本体が埋め込まれている開口(ふところ)の中に納まるかどうかの検証しなくてはなりません。また電源や配管のサイズも違ってくる場合もありますので、新しい機械が既存のそれらと互換性があるかについても、当時のエアコンの仕様書などをもとに調べておく必要があります。

 
 

【既存のエアコンが大きい場合】

新しいエアコンが既存のエアコンより小さくなる場合、パネルの周囲に隙間が出来てしまいます。こういう場合は、通常より大きめの更新用パネルを取り付けることで、天井材の補修をすることなく取替えが可能です。
 

ガス式エアコンの取替え

【ガス式エアコンの種類】
ガス式エアコンには大きく分類すると3タイプがあります。これらのシステムの特徴についてまとめてみました。

《ガスヒートポンプ式エアコン》


ガスエンジンでコンプレッサーを動かし、冷暖房をするシステム。室外機は大型の機器1台で複数の室内機を稼働させるマルチ方式です。  

ガスシステムエアコン》


暖房は給湯機でつくられたお湯(温水)を利用し、温風に変えて運転。冷房は専用のヒートポンプ式室外機で運転します。

ガスエアコン》


ガス屋外燃焼方式(冷媒加熱式)で暖房。冷房は同じ室外機で電気ヒートポンプ式で行います。1台の室外機で複数の室内機を稼働できるマルチ方式のタイプもみられます。
 
【ガス式エアコンからの取替え】
これら3タイプのガス式エアコンから、既設の配管を再利用して電気式エアコンに取り替えることが可能です。1台の室外機に対して複数の室内機が接続されている場合でも、電気式でも同様のマルチタイプの機種がありますので、これを選ぶと比較的工事がスムーズに更新できます。

【ガスヒートポンプ式エアコンから電気式マルチエアコンへ取替え】


・室外機

・室内機

【ガスシステムエアコンから電気式マルチエアコンへ取替え】


・室外機


・室内機

ガスヒートポンプ式エアコンの取替え


古くなった家庭用ガスヒートポンプ式エアコン(通称ガスヒーポン)。今は販売終了となっているため、電気式のエアコンに取り替えるしかありません。 
しかし、あまり一般的でないこのシステムからどう取り替えたらいいのか分からない、と困惑される方が多いようです。
 
このコーナーでは、取り替えるにあたってのQ&Aと、実際の施工例を参考に解説していきたいと思います。 
 

疑問点①既存の配管は使えるのか? 

→ガスヒーポンの冷媒管は、電気式エアコンと規格は同じなので使用可能です。但し、使用当初からガス欠での故障が頻繁にあったなどの場合は、配管自体に漏れ箇所がないか点検が必要です。
 

疑問点②室外機を分離することは可能か? 

→室内機側にエアコン用のコンセントがあれば可能です。
無い場合でも、新たに電源の増設工事を行えば可能になります。 


通常、だいたい4台~7台が繋がっています。2台マルチ×2セットに取り替えることも出来ます。
 

疑問点③どうやって室外機を撤去するのか? 

→室外機の重量は小さいタイプでも360㎏あります。敷地が平坦で広ければ、そのまま4人ぐらいで担いで搬出しますが、敷地が狭かったり、高低差がある場合は室外機を分解し小分けにして運び出します。
 

疑問点④ガスの配管はどうなるのか? 

→配管の先端に「プラグ」という配管を塞ぐ部材を取り付け、閉栓します
 

疑問点⑤ビルトイン形の室内機でも取り替え可能か? 

→可能です。但し間口やグリル寸法が現行品と合わない場合は、大工工事や内装のやり替えが伴う場合もあります。

では、どう取り替えるか?

どういう方法があるのか、過去の施工例を参考に解説します。 
 

実例①LDKに天井カセット形エアコンが2台あり、2F洋室に壁掛形が2台ある場合。 


【解説】LDKは2台あるものの、今までほとんど1台しか使ったことがなく、1台で充分まかなえていたので、片方はそのまま放置して残りの計3台を取り替えました。2Fの壁掛形はマルチの組み合わせにしています。
 

実例②1FはLDKと和室、2Fには主寝室と洋室に2台、それぞれにエアコン用のコンセントがある場合。 


【解説】各箇所にあったコンセントを利用して、4台全てセパレート(1対1)に。既存の配管は再利用したので、外壁に穴を開けることもなくすっきりした形で取り替えできました。
 

実例③室内機5台、うち2台は「分岐ユニット」で配管が途中で分かれている場合。 


【解説】現行の電気式エアコンの場合は、配管が途中で分岐している形では使用できないため、配管を切断、溶接して1本1本に切り分けました。よく使うリビングをセパレート(1対1)。あまり使わない洋室と和室の壁埋形、主寝室とDKをマルチに組み合わせました。
 
このように、設置状況やお客様のご要望に合わせた取り替え方ができるのです。